デンタルファイル

デンタルファイルNo.22 噛み合せと矯正について

最近の子供たちの顔は全体が小さく、顎のラインが細くなっていることにお気づきでしょうか。顔が小さく、顎が細いのは外見上カッコ良いと思われる方もいるでしょうが、噛み合せや歯並びへの影響を考えると大きな問題があります。近年、歯並びや噛み合せの悪い子供たちが急増していますが、最も多く見られるのがそうせい叢生といわれるでこぼこの歯並びです。

お口の中にある歯の大きさや数は昔から変わりはありません。しかし、顎が細く小さくなることによってスペースがなくなり、歯は「ぎゅうぎゅう詰め」の状態になります。特に小さな乳歯から永久歯に生えかわる時期に顎の奥行きが十分に成長していないと、斜めに飛び出したり、生えるチャンスを失ってしまう歯も出てきます。こうしたことが、噛み合せが悪くてうまく噛めないとか、歯並びが悪いといった状態を生み出す大きな原因であるといわれています。

では、なぜ最近の子供たちの顔は小さく、顎は細くなってしまったのでしょうか。その理由としては、なんといっても食生活の変化が考えられます。ファーストフードに代表されるように、柔らかく調理された食べ物が増えてきたことで、食事はあまり噛まなくても飲み込めるようになりました。おいしく食べられるという点ではよいのですが、噛まないことが筋肉(咬筋)の発達に影響し、顎の骨の成長に変化をもたらしているのです。例えば、運動選手が怪我などでしばらく練習を休むと、筋肉が衰え体が思うように動かなくなるのと同様、噛む動作が少なくなると顎の筋肉や骨も退化してくるのです。

このように食べ物をよく噛むことは、口や顎、そしてそれらを支える筋肉が正常に発育するためとても重要だということが、最近いろんな研究で明らかになってきました。また、唾液の分泌を促し消化吸収を助け、むし歯になりにくくすることや、脳の働きを活発にするなど私たちの健康に深く関わっていることも知られるようになってきました。顎の成長期である小学生前の子供には、歯や顎だけでなく全身の健康のためにもよく噛んで食べる食事(小魚や根菜類など)を与えたいですね。

噛み合せや歯並びが悪くなる原因として、その他には遺伝的要素や指しゃぶりなどの悪い癖があげられます。上の歯が前に出ている上顎前突や、下の歯が前に出ている下顎前突(受け口)、上下の歯が噛み合わない(開咬)などがあります。

噛み合せが悪い状態では、食べ物を満足に噛むことができないばかりか、歯と歯の間に食べ物のカスが残りやすく、歯磨きしづらいためにむし歯や歯周病になりやすくなります。また、顎関節症と呼ばれる顎の関節の痛みとも関連が深いといわれています。見た目をきれいにするだけでなく、きちんと噛めるようにするためにも矯正歯科で治療することが必要です。

矯正治療には、噛み合せや不正な歯並びの種類によって、口の外で使う装置(顎を押さえる装置など)や、口の中で使う装置(ワイヤーに力をかけ正常な歯並びに戻すものなど)があります。治療を始める時期もそれぞれお口の状態によって異なりますが、きちんとした検査や診断が必要で、長期間にわたって治療・観察していくことになります。気になる場合は、早めに矯正専門医で相談されることをお勧めします。