デンタルファイル

デンタルファイルNo.12 要介護高齢者の口腔ケア

「口腔ケア」というと、一般的には「ブラッシング」を思い浮かべますが、介護を必要とする高齢者の場合、麻痺した口腔器官が、少しでも健康な状態に近づくように、口腔の管理をしていくことを、「口腔ケア」と呼んでいます。

「口腔ケア」の目的には、むし歯や歯周疾患の予防だけでなく、正常な味覚を保ち食欲増進を促したり、生活のリズムを整えることや、自ら体を治すという意欲の高揚を促すことなどがあります。また、噛む・飲み込む(摂食・嚥下【えんげ】)ことに問題がある場合は、「口腔ケア」を行うことが誤嚥性肺炎【ごえんせいはいえん】の予防になります。

自分でブラッシングができる場合は自分で行いますが、自分で清掃が困難な場合には介護者が行うことになります。毎食後が理想ですが、できない場合は少なくとも就寝前だけは必ず行うようにします。

ガーゼ磨き

ぬるま湯で湿らせたガーゼを人差し指に巻いて歯を軽く拭き取る。また、綿棒などで、歯と歯ぐきの間の汚れを丁寧に取り除く。ただし、あまり強くこすると歯肉を傷つけるため注意する。

ブラッシング

歯垢・歯石・食べかすが停滞しやすい部分は、(1)歯頸部(歯と歯肉の境目)、(2)歯の裏側、(3)歯間部(歯と歯の間)で、いかにこの3つの部分に歯ブラシの毛先をタッチさせ、細かく丁寧に磨くことが大切である。また、歯間部は歯間ブラシを使用すると有効である。

注意点

寝たきりの高齢者の場合は、枕を高くし、頭が後方に下がらないような姿勢をとる。また、片麻痺がある場合は、枕を高くするとともに、麻痺側を上にした横向きにするとよい。義歯がある場合は、取り外して行い、取り外した義歯も義歯用のブラシで丁寧に洗う。

「口腔ケア」をすることで、気分を爽快にし、口臭を予防します。また、食欲を増進させ、生きることへの意欲につながります。人間が人間らしく生きていくためにも、「口腔ケア」はとても重要なことだといえます。