デンタルファイルNo.4 フッ素のはなし(その2)
今回はむし歯予防に使用されるフッ化物の具体的な使用方法((1)個人が家庭で行えるもの、(2)専門家が応用するもの、(3)地域住民全体に供給するもの)について紹介します。
まず、個人が家庭で行えるものとして、フッ化物配合の歯磨き剤を使用する方法があり、これは毎日用いるものとしてむし歯予防の効果を期待することができます。歯磨き剤に特殊有効成分として、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ等のフッ化物が添加されています。この歯磨き剤を使用することで15~30%のむし歯予防効果があるといわれています。
他にはフッ素洗口も家庭で行うことができます。これはフッ素の濃度の違いにより週1回行う方法(0.2%フッ化ナトリム溶液使用)と、毎日行う方法(0.05%フッ化ナトリウム溶液使用)があります。この方法は5~10mlの洗口液を口に含み、うつむきかげんで1分間ブクブクうがいをするもので、歯科医院で指導を受け家庭で行うことができます。また小学校や幼稚園等で実施されることもあります。フッ化物洗口液のフッ素濃度と実施方法の差異により、むし歯予防の効果にも差はみられますが、全体的にみて35~50%のむし歯の抑制率が認められています。
次に専門家(歯科医師、歯科衛生士)が直接歯の表面にフッ化物の溶液を塗布する方法があります。
このフッ化物は歯磨き剤やフッ化物洗口液のフッ素濃度より約9~50倍高い濃度のフッ化物溶液(2%フッ化ナトリウム溶液、酸性フッ素リン酸溶液等)を用います。この方法には綿球で歯面に塗布する方法や、トレーやスポンジマウスピースを使用したり、歯ブラシにフッ化物のゲル状になったものをつけて塗る方法もあります。
塗布する時期としては、歯の生え始めの時期は反応性が高く、フッ素の取り込み量が大きいため、この時期にフッ化物を局所塗布するのが最も効果的です。また重ねて塗布することによって効果が上がるので、乳歯が生え始める1歳頃から永久歯が生え揃う14歳頃まで6か月ごとにフッ化物を塗布するとよいでしょう。
最後に地域住民に供給する方法としては、上水道のフッ化物添加があり、上水道にむし歯予防効果の期待できる濃度のフッ素を添加して供給する方法で、アメリカ、カナダでは実施されています。日本では1952年、京都市山科浄化場で唯一のフッ素添加地区として0.6ppm濃度のフッ素を11年間添加しましたが、過剰にフッ素を摂取すると「歯のフッ素症」という慢性中毒を起こしてしまう可能性がある等の問題から現在では行われていません。
しかし、日本でも現在進められている国民の健康づくり運動「健康日本21」では「歯の健康」の項目が設けられ、幼児期のむし歯予防のリスク低減目標として「3歳までにフッ化物歯面塗布を受けたことのある者の割合の増加」、学齢期の目標では「学齢期におけるフッ化物配合歯磨き剤使用者の割合の増加」が示されています。このように日本でもフッ化物の応用が推進されるようになってきました。
むし歯予防は一時的な行動ではなく、フッ化物やキシリトールを生活習慣のなかに積極的に取り入れて応用し、長期的なむし歯予防を心がけ、歯や口の健康増進に努めましょう。