デンタルファイル

デンタルファイルNo.21 むし歯のなりたち

むし歯は、いくつかの要因が重なり硬い歯を溶かしてしまうお口の病気です。むし歯が発生するためには3つの重要因子があることを、カイスというアメリカの学者がわかりやすく提唱しました。それをむし歯発生の3条件(カイスの三つの輪)といいます。

第一の因子

ミュータンス菌をはじめとするばい菌(むし歯菌)が口の中にいること

第二の因子

むし歯菌の栄養となる砂糖がたくさん含まれる食べ物をとっていること

第三の因子

歯や唾液など、むし歯に対する生体の抵抗性が低いこと

この3つの因子が重なったときにむし歯が発生すると考えられています。つまりこれらの3つの条件のうち、ひとつでも条件から外れることがあれば、むし歯は発生しないということになります。

むし歯発生に重要なのは、口の中に住んでいる「ストレプトコッカスミュータンス菌」をはじめとしたむし歯菌です。そのむし歯菌は、歯に付着した砂糖からグルカンという水に溶けないネバネバとした物質をつくり、この物質の働きによってむし歯菌が歯の表面にしっかりと着きます。そこにまた他の菌を引き込んで、むし歯菌の塊(プラーク)を形成してしまうのです。

さらにそのむし歯菌は砂糖をエサにして酸を作り出します。歯の表面のエナメル質はある程度の強さの酸にさらされると、溶け始めますが(脱灰)これがむし歯の始まりとなるのです。

こういったことからむし歯の予防は、カイスの三つの輪の因子ごとにアプローチをしていくことが大切になります。

例えば、第一の因子であるむし歯菌を少なくするためには、歯みがきをしっかり行いプラークを限りなく少なくすることにあります。また抗菌剤の入った洗口剤でうがいをしたりすることも効果があります。

第二の因子である砂糖については、甘いおやつを控えたり、砂糖に変わる代用甘味料(キシリトールなど)を使ったおやつや食べ物に代えることができます。キシリトールはミュータンス菌が増えるのを防ぐ効果があります。

第三の因子である歯や唾液など、むし歯に対する生体の抵抗性については、フッ素塗布・フッ素洗口やフッ素入り歯磨き剤の使用で、むし歯に対する歯の抵抗性を高めることが重要となります。また、キシリトールのガムを噛むことによって、唾液の分泌を促進してプラークが歯につきにくくなることも抵抗性につながります。

むし歯予防は、何かひとつだけ努力すればよいのではなく、これらの方法を日常生活の中でうまく組み合わせて行うことが重要だと言えます。

むし歯の進行について

C1
むし歯の初期段階です。歯の一番外側にあるエナメル質のむし歯で痛みはありません。
C2
むし歯の初期から中期の段階です。エナメル質の下にある象牙質までむし歯が進んだ状態です。冷たい水にしみたり痛みが出てきます。
C3
むし歯の中期から後期の段階です。歯の神経である歯髄まで進んだ状態で、穴があいているのが自分でも分かり、強烈にうずいたり痛みを感じたりします。
C4
むし歯の後期の段階です。歯の神経は死んでしまい根だけが残っている状態です。